カノンの韓国地方便り。  

慶尚北道、大邱を中心に韓国の地方あちこちを行ったりきたり。

大邱(テグ):コロナウイルスの影響による大邱市民生活の現状(2月21日)

 

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こんにちは。カノンです。

今年(2020年)1月、中国武漢でコロナウイルスによる患者が確認

された時。ちょうど帰国中で、日本でニュースを見ていました。

武漢は学生時代、長江山峡下りをした際訪れたことがあり、

ニュースを見ながら街の様子やそこで出会った人たちのことを

思い出しつつ、被害が拡大しないことを祈りました。

 

あれから1か月、ブラウン管を通してだけ接点があった

コロナウイルスが、あっという間に感染拡大し、

自分の身近な脅威となったのは日本も韓国も同じかと。

 

 

 

さて、ここから大邱の話。

韓国に戻った1月5週目は大邱はまだ穏やかでした。

韓国では2020年1月19日に初の感染者が確認(中国人女性)

されています。韓国で1番患者が発生した後も、

大邱では感染者が出ることがなく、韓国の清浄地域と

呼ばれていたほど。それでも、マスクを着用する市民は多く、

人が集まる遊園地や繁華街などは比較的静かな状態でした。

 

韓国では2月に入ってから、日本への渡航も自粛する雰囲気があるので、

一時帰国中の在韓日本人も予定を早めて韓国へ戻る人もいます。

韓国に戻った後に、2週間の自宅待機を要請する会社や学校

などもあるためです。(※地域差や帰国時期、個人、その他諸々の

事情で一律同様の状況とは限りません)

 

小、中、高、大学は春休みの学校も多い時期ですが、

幼稚園や保育園、春休みでない学校などではマスク着用を

ほぼ(義務)化していた教育施設も多く、感染予防の

対策はかなり徹底していました。商業ビルや店舗などにも

以前に増して消毒薬が設置され、マスクを配布する

学習塾なども。皆が感染予防を心掛けつつ、でも日常生活を

大きく逸脱する必要がないレベルで穏やかだったのが大邱でした。

 

 

それが一転したのが2月18日。

この日の朝、大邱で初めての感染者(31番)が

確認されたと報道されるや、雰囲気は一気に緊張状態に。

大邱で初めて確認された患者は新天地(シンチョンジ)教会という新興宗教(韓国全土に有)の信徒で、

症状があったにも関わらず、教会やレストランなどに出かけていた

ことが集団感染の引き金となりました。

翌日19午前に確認された追加感染者15人がやはりこの団体との

関連者が多く、31番と接触があったことが報道されたこと、

それ以降続く感染者増加の報道、

先日は、それまで感染源が分からなかった慶尚北道の

清道(チョンド)郡の某病院入院患者(本日死亡者2人目)も、

31番患者との関連があったことが発覚し、

市民にとってはショッキングなニュースが続いています。

 

現在、幼稚園や小学校の卒業式シーズンですが、18日も多くの

園や学校で卒業式が予定されていました。韓国で感染者が確認されて

以降、早い段階で今年の卒業式は、保護者の参加なしで行うと

決定した学校が多くを占めていました。

大邱でも感染者確認を受け、保護者不参加はもちろん、

マスク着用姿で、急遽、講堂ではなく教室で

クラスメートと教師だけで卒業証書を授与するというスタイルを

とった園や学校もありました。こうした対応に、保護者からの

大きな反対はなかったようです。こういった点を見ても、

市民レベルでも感染防止の強い意志があるように思われます。

 

 

 

 

結局19日に51人、20日には104人、

21日には156人と。18日以降の感染者のほとんどが大邱・慶北地域、

特に31番と関連がある可能性が明らかになるにつれ、市民の緊張

状態は現在かなりのもの。この件で精神的な疲労を感じている市民が

数多くいます。

 

31番患者が16日にも教会を訪れているため、

今後まだ感染者が出ることが予想されていることはもちろん、その他の

感染者から既に感染しているであろう人々も大勢いる可能性があるわけで。

大邱では今、多くの人が感染しないように、また感染させないように

神経を使っている状態です。

 

 

 

とにかく大邱は今かつてないほどの緊張状態。31番患者の確定と

それに続く感染者の増加がものすごいスピードで確認されていった

19日(水)から市民の緊張は一気に高まり、大邱の雰囲気は

ガラリと変わったと言えます。

 

20日には小、中、高で新学期の開校が1週間延期

されることが決まりました。

主要観光地の施設などは現在ほとんどが休館、

大邱の主要デパートは複数休店。

患者の導線にあった店舗などが休転の措置を採っただけでなく、

自主的に営業を自粛する店も増加しています。

学習塾や文化センター、イベントなども積極的に休講、

中止するよう大邱市や教育庁から要請ある状態。

市民にも緊急アラートで何度も注意喚起があります。

多くの人が外出を控えようとしている状態で、人と会う約束は皆

キャンセルする傾向にあります。それに対して異論を唱える人がいるような

雰囲気はなく、皆同じように緊急事態という意識を共有しています。

 

私は食料品などもインターネットで注文し、配達してもらうことが

多いのですが、いつも利用する大手マートは、今注文しても

1週間先の配達となってしまうほど。

普段は注文して早ければ数時間後、遅くても翌日配達

なのですが……。それだけ外出を控えようとしている人が多い

ということかと。

 

ですが、大手マートや近所のスーパーなどの陳列棚が空っぽという

ことはありません。(ツイッターではそのような内容のツイートもあ

るようですが……それが一般的な状態ではないですね)

ただ、多くの人が外出を控えているため、

なるべく自宅で過ごすことを考え、ラーメンやレトルトごはんを

たくさん購入していく人は多くいます。

秩序はしっかり保たれていますし、

過度な食料品の買いだめなどが問題になる事態は現時点ではありません。

 

また、これは大邱だけに限りませんが、

宅配も対面による配達を禁止している業者が多くあり、

荷物は自宅前に置いておく、というスタイルが

むしろ今は利用者側でも歓迎する雰囲気です。

 

 

大邱以外の都市の一部病院では、最近大邱を訪問

したことがあるかどうかを確認する施設も。

それだけ今大邱が緊張状態にあるということで……。

 

 

 

と、こういう状況なのが今の大邱。

 

 

 

 

 

 武漢でコロナウイルスが深刻化しつつある中、

武漢の町を封鎖、人の出入りを制限したというニュースを見たとき。

最初に頭に浮かんだのがカミュペストでした。

昨年夏に読み始め、半分ほど読んだところで、一時帰国したり

して、そのままになっていますが……。あの物語を読みながら、

その時私は、例えば自分がこういう状況に置かれたらどうだろうか。

という事を想像していました。

 

最近”大邱封鎖”という表現で

書かれる記事もあるようですが、これは現実味がないもので。

しかしながら、パンデミックに向かっているかのような

今の状況は怖いものがあります。

 

 

海外で暮らすようになってから、いざというときに自国に帰れなく

なるような事態が起きた時のことを考えてみることがあります。

帰れなくなる、あるいは帰らないという選択をせざるを得なくなる、

理由はいろいろあるでしょう。例えば帰った後も、どういう状況に

なることが考えられるか、等々。

そんなことを含めて今回武漢の町の事態から今の大邱の様子を

ニュースで見ながら、体感しながら、

あれこれ考えを巡らせています。

 

 

韓国も日本も一日も早い収束を願って……。

 

 

 

今日はこれから読みかけのカミュ「ペスト」の続きをまた

読もうかと。

 

では、また。

 

 

 

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